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7/19 「吸血鬼文化論」 井上雅彦先生

自分と吸血鬼の愛しい共通点を見つけ出し考察する                  

 

自分と吸血鬼の共通点としてまず思い浮かぶのは、“苦手なものがある”点である。多くの伝承で吸血鬼は、日光や十字架、大蒜などが苦手であるとされている。私も日光に当たるのはあまり好きではないし、虫は見ただけでも叫んで逃げ出したくなるほど嫌いだ。

次に、当たり前であるが私も吸血鬼も食事をする。もちろん食事の対象は異なるが、空腹になり、それを満たそうとする行動は共通する。

 

最後に、夜に行動することが多い点。吸血鬼は前述したように日光が苦手であり、夜間に行動しているとされる。私は、(もちろん、学校やアルバイトなどの社会生活があるため完全に夜間に生活しているわけではないが、)幼い頃から夜更かしする生活だったためか、今でも夜遅くまで読書や作業をすることも多く、静かな夜の方が落ち着くときもある。

 

講義中、“吸血鬼の魅力を認識し、吸血鬼に感情移入すること”である“ヴァンピリズム”という言葉があった。ここまで自分と吸血鬼との共通点を挙げてきたが、それらを考える中、自分がふれたことのある吸血鬼が登場する作品について思い返してみた。

その中でふと、近年の吸血鬼が題材となっている作品は、ヴァンピリズムを感じさせるような作品が多いように思った。2008年に映画化された「トワイライト」シリーズなどの映画もそうであるが、特にその傾向が強いと思うのは、女性向け恋愛ゲームである。その中でも有名なのは「薄桜鬼」シリーズ(2008-、アイディアファクトリー)や「DEABOLIK LOVERS」シリーズ(2011-、Rejet株式会社)だろう。

 

このふたつのタイトルはそれぞれのレーベルの中でも根強い人気を誇る。なぜ人は吸血鬼という存在に惹かれるのだろうか。勿論、そこには多くの理由(普段生きている中では絶対に体験できない非日常的なシチュエーションである、など)が挙げられるだろう。

しかし、私がその中でも感情移入をしやすくしていると思うのは、人間とよく似ている点である。

これらの作品に登場する吸血鬼たちは皆、「人間の血を吸う」、「超人的な力を持つ」、「行動時間が基本的に夜である」という点は旧来の吸血鬼像と同じであるが、一方、「個々の性格に様々な個性がある」、「様々な悩みや葛藤を抱えている」など、感情移入がしやすい設定になっている。他にも、(それとは別に血液は必要とするが)人間と同じものを食べ、好き嫌いもあるなど、旧来の吸血鬼像よりも人間味のある存在となっており、自分との共通点や共感できる点を見つけやすいように思う。

 

 このように考えてみると、吸血鬼との共通点または共感できる点が意外とあるように気づく。ファンタジーの世界でもないと経験することのできない非日常の要素を持ちつつも、人間との共通点も有する存在である吸血鬼。

 

だからこそ、私たちは“吸血鬼”という存在に惹かれるように思った。

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