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5/31 「SF漫画における性の政治学」  永山薫先生

性別逆転書評                  

 

 私は今回、「妖狐×僕SS」という作品を取り上げる。

 

 この作品は先祖に妖怪と交わった者がおり、その妖怪の血を色濃く受け継ぐ 「先祖返り」 と呼ばれる者たちの物語である。主な登場人物は、

 

鬼の先祖返りである「白鬼院凛々蝶(しらきいんりりちよ)」という少女

彼女のシークレットサービスを請け負う九尾の妖狐の先祖返り「御狐神双熾(みけつかみそうし)」という青年

である。

 この2人の性別を逆転して読んでみて気づいたことや感じたことが2点ある。

 1つ目は原作だと15歳の少女と22歳の青年という設定であるが、性別を逆転するとお姉さまと少年の関係になるという点だ。「おねショタ」という見方ができる。性的描写はない作品だが、双熾は凛々蝶に対してとても変態的で部屋に凛々蝶の写真を張っていたりしており、ストーカー気質な部分がある。

 これを性別を逆転させて読むと少年が受けでお姉さまのほうが攻めというようにとれる。

 

 授業でも少し触れられていたが、戦後、男性優位社会が後退しつつあり、そういった作品は昔に比べて少なくなってきているものの未だに生き残っている。その生き残っている理由のひとつは、

 

「これまでの人間の遺伝的な脳と心理構造が残っており、現実は変わってもマンガ(架空)の中にそれを求めている」

のではないのだろうか。原作が少女と青年という設定になっているのも逆転させた時よりも読者に共感してもらえる部分が多いと感じたからではないかと考えられる。

 

 2つ目はとても読みにくかったということだ。原作者はキャラクターにあった性別を選択しストーリーを展開させている。そのため性別を逆転させるとストーリーを読み進めていくうえで読者に違和感を与えてしまう。もし性別を逆転させるのであれば、このストーリー展開ではなかっただろうというような考えに至った。

 

参考文献

『妖狐×僕SS』(藤原ここあ作/株式会社スクウェア・エニックス発行)

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